エステル・ユスターシュの航海日誌

FINAL FANTASY XIV Player's Logbook

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第18章 クレージーチェシャキャッツ号

※この物語はあたかも本編準拠のような単なる妄想です。
※ときどきネタバレとか含まれちゃうかも知れません。






 ひゅう、なんて耳元で囁いて潮風が駆け抜ける。
 船乗りたちの喧噪に混じって、磯の香りにホップの香り。
 まばゆい夏の陽射しが海を輝かせ、そこに影を落とすのは飛び交うカモメ。
 星4月のカモメって元気いっぱいなんだよね。

 西ラノシア、エールポート――ここは港町として知られてる。

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 あの夜、武装商船クレージーチェシャキャッツ号とやらの船長に、よりにもよって私が任命された。外国人の、冒険者の、公社嘱託の、船酔いする私が。
 確かにね、法的には公用船の船長を誰にするかなんて首長たるメルウィブ提督の裁量ひとつで決めてもいいっちゃいいけど、なんで私?
 最近やっとオモテとトモを間違えなくなったけど、今でもポートとスターボードはときどきわかんなくなるし航海術なんてさっぱりだし、どう考えても荷が重い。武装商船の船長なんてグランドカンパニーの階級でいえば佐官に相当するし、少甲士待遇の私にはやっぱり分不相応。
 任命された今もシルフ族にでも化かされた気分だよ。
 でも、どんなお仕事も引き受けちゃうところが木っ端役人の悲しい定め。
 なんだかよくわからないまま、船を受領するべく私はエールポートにやってきた。

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 大きなガレオン船が何隻も停泊してるし、沖合にはもっともっと投錨してる。その船籍も様々で、中には遠く南洋やら近東やらの船もちらりほらり。
 それもそのはず、エールポートはリムサ・ロミンサに次ぐラノシア第二の港町。
 酒税がお安くされてるから長期航海に出る商船はここでたんまりとエールを積み込んで出航する。これは商品じゃなくって飲料用。ほら、真水は腐っちゃうからね。
 なんて知識も税関公社のお仕事で覚えたもの。
 今までは書類でしか知らなかったけど、こうやって実際に目にするとまるでお祭りみたいな港の喧噪もなんかちょっとわくわくする。

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 例の船は混成艦隊預かりだから、駐屯する黒渦団の天幕を訪ねた。
「武装商船クレージーちぇちゃきゃっちゅ号船長、エステル・ユスターシュ参りました!」
 ちょっと噛んだ!
 恥ずかちい!
 だいたい!
 そもそも!
 なんなんだよ!
 狂騒的なチェシャ猫なんて!
 どんな名前だよ!
 言いにくいでしょーがー!
「うん? ああ、CCCs号の」
 そんな略称があるなら早く教えてよぉー!
「ふむ? あの船の、船長、かぁ?」
 うっわ! ものすっごくわかりやすい! うさんくさいモノを見る目!
 わわわわわ私だって自分が船長さんだなんて未だに信じられないんだよう!
「……その様子じゃ、何も聞かされてはいないようだな」
「…………はい?」
 うん? 私も船長に任命されて、エールポートが母港だって聞かされて、あとはなんかうまい具合に利益を出して上納するようにしか言われてない。
「実は、な?」
 士官たちは声を潜めた。まるで、空舞うカモメにも隠すように。

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「はぁ!? そんな船はないんですかぁ!?」
 空舞うカモメもビックリして落っこちちゃうくらいの声が出た。
「シッ! 馬鹿者ッ!」
 怒られた。
 でも! だって! ほら!
 存在しない船ってどーゆーことなの!?
 最先任の士官がやっぱり小声で話してくれたのは、つまるところこういうことだった。
 黒渦団のナンバー2、軍令部総長のエインザル大甲将は実は元海賊らしい。
 そもそも、黒渦団のバラクーダ騎士のといってもみんな海賊出身だから気にしなくてもいい気がするけど、どうやら格が違うんだって。
 伝説の大海賊、霧髭。
 私だってその名前は知ってる。
 二十年くらい前、ときのウルダハ王婚礼のお祝い品を船ごと略奪して、その金銀財宝をどこかに隠した。若きメルウィブ提督が率いる前からシルバーサンド一家と数々の死闘を繰り広げた。その名は代々受け継がれ、エオルゼアの歴史に名を刻まれている。なんか怖い仮面かぶっていたとかなんとか。
 ともあれ、リムサ・ロミンサ海賊の歴史に教科書があるとすれば、メルウィブ提督が登場するまで歴代の霧髭の名前が占めてるに違いない。
 それが海賊霧髭。
 で、最後の霧髭が、なんとエインザル大甲将なんだって!
 ビックリだよ!
 だって、アンタ! メルウィブ提督と殺し合いしたんじゃないの!?
 それはさておき。
 こんな事情もあり、ウルダハやグリダニアとのエオルゼア都市軍事同盟締結もあり、さすがに同盟国の船を襲いまくった霧髭がグランドカンパニーにいては外交問題になっちゃうわけで。
 そこで、エインザル・スラフィルシンなる人物は、長年にわたって武装商船の船長を勤めていたことになった。
 その船の名がクレージーチェシャキャッツ号。
 もちろん、彼は船長を勤めていないし、船長名簿は公開された公文書だから実在の船の船長ってことにもできない。
 そこで生まれたのがクレージーチェシャキャッツ号。
 書類上にしか存在しない架空の船。
 どーりで私なんかが船長に任命されたわけだよ!

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「じゃあ、私はなにもしないでいいんですよね?」
 だって、船ないし。名目上ってことだよね?
「何を言っとるんだ?」
「へ?」
「貴官の任務は偽装だ」
「ふぁ?」
「本来存在しないはずの武装商船クレージーチェシャキャッツ号を、少なくとも同盟国に向けた対外的かつ公的な書面上だけでも存在するかのように見せかけるのが、同船船長の任務と心得よ」
 ちょっと待って待って待って!
 なにそれ!?
 なにそれなにそれ!?
 ええっ!?
 この日の夜は、いっくらエール飲んでも酔えなかったよね!

 エステルの物語 第2部

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