エステル・ユスターシュの航海日誌

FINAL FANTASY XIV Player's Logbook

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第14章 エステル・ユスターシュ

※この物語はあたかも本編準拠のような単なる妄想です。
※ときどきネタバレとか含まれちゃうかも知れません。




 
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 一番最初の記憶がなんだったかって考えると、たぶん雪と針葉樹。
 泣きじゃくる私は養父に手を引かれて、森の奥のお屋敷へととぼとぼと歩いてった。それだけは覚えてる。涙で濡れたほっぺたが寒さでひりひりした記憶。

 教えてもらえなかったし今でもどこで生まれたか知らないから、私は針葉樹に覆われた雪深いあの北国を故郷だと思ってる。それでも、養父母は私の正確な生年月日を第六星暦1551年(帝国暦30年)星5月1日って知ってたわけで。たぶん、生まれ故郷も同族も滅んじゃったのを不憫に思って引き取ってくれたんじゃないかな。
 エステルって名付けてくれたのも養父だしね。
 なんて話をエオルゼアの知り合いにするとちょっとした悲劇として受け止められるけど、悲惨な体験なんてしたことないんだよね。
 故郷は北州イルサバード大陸北部の辺境にある。私が生まれる三十数年前にはもうガレマール領(その頃はまだ帝政以前だった)だったんだって。抵抗する戦力もなければ、青燐水も産出されない田舎の小国なのもあって、他の属州と比べれば占領統治政策は緩やかなものだった。

 養家のエウスタキウス家は故郷ではちょっとした有力者で、篤志家でもあった。だから、私を実の子のように養ってくれた。妹分、つまり養父母の長女だって私を「エステル姉」って呼んでたくらい。部族どころか種族からして違うのにね。
 エウスタキウス家は公的にはイルサバード系エレゼン族なんだけど、誇り高い養父はエオルゼア系のフォレスターなんだって、ことあるごとに言ってたんだよね。なんでも、千年くらい前に流入したヒューラン族にエオルゼアを追い出されたエレゼン族の末裔なんだって。神々に愛されし地エオルゼアの出自を誇りにしてた。
 その養父は帝国の階級でいえばルクスだった。中級の技術将校待遇って感じかな。普通は奴隷同然のアンになる被占領地の住民では破格の扱い。っていうのも、養父は魔法の大家だったから。
 生粋のガレアン族はほとんど魔法が使えないんだけど、帝国軍の多くは属州からの徴募兵で、その魔法兵には誰かが魔法を教えなきゃいけない。養父は帝国軍の魔法教官を長年勤めていた。
 もちろん、故郷の愛国者たちからは白い目で見られたよね。屋敷に石とか投げられたこともあるし。だけど、私にはわかってる。養父が家族や使用人を守るために歯を食いしばっていたことを。

 お屋敷には蔵書がいっぱいあった。呪術、幻術、巴術、エオルゼアに関するもの。大きな書庫は私の遊び場だったし、学舎だったし、時には寝室にもなった。残念ながら、養父みたいに魔法に精通することはなかったけど。
 でも、小さな頃からエオルゼアっていう場所に憧れがあったのは養父と本のおかげ。
 クリスタルとエーテルに満ち、チョコボが闊歩する、神々に愛された土地。子供心に、いつか行ってみたいってずっと思ってた。
 思ってはいたんだけど、成人した頃にはすっかり忘れてたよね。
 魔法は大して使えなかったかわりに読み書きはそこそこ出来たから、その頃はエウスタキウス家の経営を手伝ってた。
 名前はエステル・バス・エウスタキウス。
 商業に従事する帝国市民待遇。この身分も養父のおかげ。
 平穏で退屈な日々。
 それが死ぬまで続くと思ってた。
 でも、五年前。
 私が二十一のとき、すべてが一変した。
 遙か西方、我らの帝国軍が蛮族鎮定に当たっているエオルゼアで謎の大破壊が起きた。当初は情報が錯綜し、後には情報が検閲されて真実はよくわからない。
 曰く、星が落ちた。曰く、竜神が復活した。曰く、帝国軍の秘密計画が発動した。曰く、預言詩にはなかった第七霊災が起きた。
 真実がなんであれ、それは憧れの地エオルゼアの終焉を意味する。
 エオルゼアなんて遠国、行ったこともないし、養父と違ってルーツでもない。それでも、その夜、なんでか涙がぼろぼろと流れて、止まらなかった。

 それから、私がエオルゼア亡命を決心するまで五年もかかった。
 一時はエオルゼアはすでに滅んじゃったなんて噂も飛び交ったけど、兵は帰ってこないし、交易も行われてた。帝国の版図を示す地図にも資料にもしっかりとアラミゴ準州の名があった。
 どうやら滅亡を免れ、急速に復興してるらしい。もちろん、国境の向こう側のことだから定かなことはわからない。
 それでも、っていうか、それだからこそ、私は焦った。
 だって、次は本当に滅んじゃうかも知れないんだから。
 五年も悩んだ末、ある晩、私は養父に相談した。
 エオルゼアに行きたい、って。
 その夜の月がどれほど綺麗だったか、私は忘れない。

 初級の魔道書、エオルゼアまでの路銀、ヒューラン族の民族衣装、偽造旅券、私の守護神が惑星と運命の女神ニメーヤ様だという教示などなど。養父からもらったものはたくさんあるんだけど、一番大切なものはやっぱりコレ。
 エステル・ユスターシュという、名前。
 エウスタキウスは帝国語読み、本来は古エレゼン語のユスターシュが家名だから。旅立つ私にそう名乗ることを許してくれた。
 出立は小雪舞う早朝。
 架空の外交郵袋を抱えた総督府の使節に扮して、私は故郷を後にした。
 かつて泣きじゃくって歩いた道を、その朝は泣かずに歩いた。泣いちゃうかなって思ったけど、私の代わりに可愛い妹分が泣いてくれたからかも?
 雪と針葉樹に囲まれたユスターシュ家はやっぱり私の故郷だと思う。

 役人のふりして大山脈を越え、商人のふりして豊穣海を渡る。サベネア島から先は身分を偽ることなく、堂々とエオルゼアへの渡航者を名乗った。
 こうして私、エステル・ユスターシュはエオルゼアへとやってきた。

 この旅程、意外とすんなり進んだんだけど、ふたつだけ問題があった。
 ひとつは路銀がギリギリだったこと。
 いやはや、まさか船賃がこんなにお高いだなんて!
 もうひとつは私が船に酔っ払うこと。
 いやはや、まさか船がこんなに揺れるだなんて!


「おえっぷ」


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 序章「船酔い」へつづく……。

 エステルの物語 第1部

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